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デジタルマーケティングの歴史<br />~マーケティングとITの“未来”へつながる道~

デジタルマーケティングの歴史
~マーケティングとITの“未来”へつながる道~

今や、マーケティングは「IT」「データ」「デジタルデバイス」とは切り離せない時代となりました。その本質は、購買履歴、属性・趣味嗜好、位置情報…などをデータ化し、分析することで企業の売上を最大化するという大きな目的に向かうことにほかなりません。この動向は今後も続くと予想されますが、マーケティングにデジタル化がどのように寄与してきたのでしょうか? マーケティングの“今”を知り、未来の成功の鍵をつかむためにも、その歩みを整理しました。

 

目次
▼1995年前後~1999年頃    デジタルマーケティングの黎明期
▼2000年~2009年頃      デジタルマーケティングの成長・発展期
▼2010年頃~2015年現在    デジタルマーケティングの2つの局面
▼終わりに          今後のデジタルマーケティング

 

 

1990年代~1999年頃
デジタルマーケティングの黎明期

 

1990年代前半――。まだ携帯電話を持つ人もまばらな時代。企業が消費者に対してプロモーションを考えた時に、マスメディアほど絶大な力を持つ手法はありませんでした。

企業は新聞、雑誌、ラジオ、テレビという4メディアのうち「どのメディアに掲載するのか」が重要であり、その中でいかに競合に差別化したメッセージを配信するか…ということを考えていました。それは、「企業が消費者に対してメッセージを発信する」という、現在に比べると、どちらかというと企業から一方向的なものでした。

一方、企業対企業(BtoB)では、未だ高度成長期の余韻から「足で稼ぐ営業」が主流。“科学的”にプロセスを分析し、リードを獲得したら地道に育てる…という手法とは対極のようなもので、名刺を取ったらどんどんアプローチするというようなケースが多かった時代でした。

そして1990年代後半。少しずつ、IT普及の兆しが見え始めます。PCを所有する世帯が2割~3割向け推移し(内閣府)、同じくインターネット人口も1999年には2割超えを果たします(総務省)。携帯電話はほぼフィーチャーフォン(いわゆる「ガラケー」)でしたが、ドコモの「iモード」など、新たなビジネスモデルが登場。PC上や携帯電話上で「メール」を持つことがまだ新鮮だったためか、この時代のメール広告の購買率やレスポンス率は総じて高いものだったと言われています。とはいえ、これまでの広告を単にWebに載せかえるだけ、という程度の企業も多く、まだインターネットの商用利用は模索段階の時期でした。

この時期を総括すると、デジタルマーケティング発展に向け、少しずつその準備が整えられていく、いわばデジタルマーケティングの黎明期ともいえる時代でした。この期間があったからこそ、2000年代の爆発的な発展につながるといえます。

では、デジタルマーケティングに関連する話題を年表で振り返ってみましょう。

 

 1990年代前半
・ハイパーテキストが世界中に広まる。JPドメイン登録、国内初のISP(プロバイダ)登場など、現状のインターネットに近い仕組みが産声を上げた時期。企業や一般個人のインターネット利用が始まる。1994年
・世界最初のバナー広告が公開(米国の電話会社AT&T社の広告、媒体はHotWired.com

1995年
・Windows 95の発売、メディアでも大きく取り上げられる。Macとともにインターネットの対応も話題の1つに。
・ISPの急増に伴う料金の低廉化
・PHSサービス開始、IE登場、amazonサービス開始

1996年
・Yahoo!Japan、BIGLOBE、OCNなどがサービス開始

1997年
・Google検索登場(英語)
・Yahoo!Japanがバナー広告を掲載するサービスを開始
・楽天市場がサービス開始(~1999年にかけて)

1999年
・NTTドコモ「iモード」サービス開始
・2ちゃんねる開設
・アフィリエイトの認知度が高まり普及が進む
・インターネット人口1,508万人
・セールスフォース・ドットコム(米国)創業

 

※出典:『インターネット白書』一般財団法人インターネット協会

 

 

2000年~2009年頃
デジタルマーケティングの成長・発展期

 

カンブリア爆発とは、古生代のカンブリア紀に爆発的に生物の多様化が進み、現在の生物のベースができた時期と言われています。これが匹敵する――かどうかは別として、デジタルマーケティングの多様化が進み、大きく成長・発展を迎えたのがが2000年~2009年頃の時期。

※カンブリア紀(古生代のうち5億4200万年前~4億8800万年前の時期)。それまで、生物の種類は発見されている限りわずかだったものが、突如として現在の生物の種類が増加。分類学上の「門」が、現在と同程度にそろった時期とされる。この時代の地球は主に海に覆われた。代表的な生物は、三葉虫、アノマロカリス、ハルキゲニアなど。

大きなポイントとして、下記の3点に注目してみましょう。

1つ目は、企業と顧客の双方向コミュニケーションが進んだこと。
2つ目は、ECサイトの成長と競争の激化。
3つ目は、検索エンジンの重要度の高まりです。

まず1つ目の、双方向コミュニケーションについて。
2002年頃から急速に普及したブログ、2004年からはmixiやFacebookサービス開始、2006年ニコニコ動画、twitter(米国)サービス開始というように、現在も有力なSNSがいくつも登場しています。これで何が変わったのか?――消費者が発言する場を持ったことが大きな変化となりました。これまで発言者は常に企業でした。しかし、場合によっては消費者の方が大きな声を上げることができます。また、企業と一消費者が1対1でネット上で対話し、それを商品の改善などに役立てる…という社会が実現しているのです。ただこの時期は、一般への「普及」の時期とも言えます。普及して一定の母数を持つに至り、SNSがマーケティング施策として効果的に機能する時代はもう少し先の話です。

2つ目が、ECサイトの成長と競争の激化。
「インターネットでの買い物は怖い」と考えていた人々の心の壁を取り除き、手軽にネットショッピングを利用する人々が増加した10年でした。それを象徴するのが、Amazonや楽天市場などのような大手ECサイト。
マーケティングの目的が売上を上げることであれば、「インターネットを利用して自社商品を売る」というのが、手っ取り早いというものです。しかし、ほかにも多様なECサイトが登場したものの、価格競争が容易にできることや、評判が共有されやすいことなどから競争も激化。瞬く間に、高度な戦略と緻密な戦術を持って戦わなければならない、激戦区と化しました。

3つ目が検索エンジンの重要度の高まり。
インターネット人口が増加するとともに、「買い物の前にインターネットで調べる」という消費者の行動が浸透しました。こうして検索サイトで上位にいることと、購買の相関関係が指摘されるようになると、「いかに検索サイト上位にいるか」が重視されるようになりました。また、検索を利用したリスティング広告も、費用対効果が高い広告として普及していきました。この頃から、検索エンジンを使ったマーケティング施策に対し、明確に予算をかける企業も増えてきたと考えられます。
また、Web上の施策の結果が、短時間で明確に「数値」としてわかるため、Webサイトへのアクセス解析も徐々に定着。マーケティングの現場には、仮説を立てて実施、検証して改善するというPDCAサイクルが浸透しやすくなる土壌ができたといえます。

もちろん、上記はPDCAの重要性を見出す1つのケースに過ぎません。しかし、マーケティングのデジタル化、データ化が進むと、自ずと施策をPDCAサイクルで回し続けることの必然性を感じることにつながるはずです。デジタルマーケティングのメリットとして、このように「データを取得し、裏付けを持って次の施策を実施。その検証を行う」という科学的な手法ができるようになること。これを「データドリブンマーケティング」と呼ぶ場合もありますが、継続して効果を出し続けるために、マーケティングはデジタル化すべきと考える企業が増えてきたのも、この時期ではないかと考えられます。

一方、BtoBマーケティングの分野を見ると、長く続く経済低迷やリーマンショックにより大きな影響を受けた時代といえそうです。その結果、高度成長期由来の営業スタイルは変貌し、SFA/CRMなどを活用した科学的なセールス・マーケティングが、この分野に一石を投じています。その背景にはやはり、ITやクラウドの普及が挙げられます。

BtoC、BtoBとも企業にとって、新たなマーケティングのためのインフラが軒並み登場し発展・多様化した、まさに爆発的な10年だったと言えるのではないでしょうか。そのうち、主なものを下記年表にまとめました。

 

2000年
・Google日本語での検索サービス提供開始、検索エンジンの普及が本格化、GoogleAdwords提供開始
・株式会社セールスフォースドットコム(日本法人)設立2001年
・インターネット人口4619万人※1
・Wikipediaプロジェクト始動

2002年
・ブログの普及が進む、翌年位にかけて芸能人
・著名人の利用も拡大

2003年
・GoogleAdSense提供開始
・Skypeリリース

2004年
・mixi運営開始、Facebook誕生
・検索エンジン利用増、Googleで検索できるページが60億突破

2005年
・インターネット利用者8,500万人超※2
・Youtube設立
・Google、ディスプレイ広告提供開始
・Google、Google Analytics提供開始
・e文書法施行

2006年
・Twitter設立
・ニコニコ動画サービス開始、
・Google社、Youtube買収

2007年
・iPhone登場
・日本でもTwitterが普及
・Android発表

2008年
・Twitter日本語版
・iPhone発売
・App Store開始
・Android Market開始

2009年
・日本アドバタイザーズ協会がトリプルメディア(ペイドメディア、オウンドメディア、アーンドメディア)提唱

 

※1 出典:『インターネット白書』一般財団法人インターネット協会
※2 総務省

 

 

2010年~2015年現在
デジタルマーケティング2つの局面…複雑化とフラット化

 

2010年、iPadが登場。iPadは、確実に時代の空気を象徴するデバイスの1つとして、多くの人々に受け入れられました。SNSとも親和性が高く、常に持ち歩いているスマートフォンやタブレット端末が、2010年以降のデジタルマーケティングを大きく牽引することになります。

スマートフォンからのインターネット利用者は増加し、PCからのインターネット利用者数を追い抜くとも言われています。また総務省の調査では、スマートフォンからのインターネット平均利用時間が、2012年には67.3時間、2013年には68.8時間、2014年には73.0時間と増加傾向が明らかになっています。

そこでこの章では、スマートデバイスという新たな機器が加わったことによる、デジタルマーケティングの複雑化と、その対極に位置するフラット化という2つの視点から考えてみましょう。

まず1つ目の複雑化について。
デジタルマーケティングを複雑にしている要因として、1つはデバイスの多様化、2つはビッグデータという言葉に象徴されるように情報に溢れている状況が挙げられます。

複雑さを考える上でまず、多様な端末に対応する販促やプロモーションが必要ということが挙げられます。また、アクセス解析を行う場合にも、どの端末からのアクセスか知ることは有意義ですが、分析して改善策を検討するのはやはり、プロセスが複雑化することでしょう。

次にビッグデータという面。ビッグデータは単に大量データを意味するわけではないことはここでは割愛します。スマートデバイスの登場で、動画、SNS、音声といった定性的なデータも、顧客を分析する以上、必要と考えられるようになってきています。

これらのような複雑化したマーケティングに関する情報を処理するためにも、マーケティングはデジタル化する必要があり、高度なシステム処理すら必要となるのです。

一例を挙げると、Beacon(ビーコン)というテクノロジーが注目されています。Beaconは、スマートフォン等の位置情報と連携して、メッセージを送ったりすることができます。

例えばAさんと言う人が、店舗に一度訪れて、会員登録したとします。このAさんが、店舗付近を通った時に、店舗に設置されたBeaconが「今なら半額!」と言った通知をAさんに送ることができるようというような仕組みです。このような高度な技術が、スマートフォン等と連携して実現できるようになりました。これは、デジタルとリアルを“つなぐ”画期的な技術とも言えるでしょう。

では、もう1つのテーマであるフラット化について考えてみましょう。
フラット化と言うのは、デザインに関わる人には特に、なじみ深い用語かもしれません。いわゆるフラットデザインとは、Windows8のUIのような、平面的にタイルを敷き詰めたようなデザインです。「それがデジタルマーケティングとどう関係している?」と考える人もあるかもしれませんが、実は大きな関係があるのです。

1つ目は、上記のスマートデバイス普及にも関連しています。今、多くの企業サイトなどでもフラットデザインを採用していますが、それは消費者(顧客)のユーザビリティを考えてのこと。情報が階層化された状態は、情報は整理されていますが操作は複雑化します。フラットデザインは単に見た目のみならず、操作ボタンなどをすべて第一階層に平面に置くことによる、操作性の向上という考え方がその背景にあります。

消費者や見込客は、日々、膨大な量の情報に囲まれています。1つの記事やコンテンツに割く時間はあまり持ち合わせていません。こうした中、自分に必要な情報のみが自分がアクセスする“第一階層”に揃っていることを、消費者としては求めるものです。例えばそれは、毎日アクセスするFacebookなどSNS、ニュースサイト、情報サイト…など。こうした消費者の心理を知り、第一階層で、フラットにアプローチする方法を考えなければなりません。

2つ目には、フラット化するのは「世界そのもの」という考え方です。2006年、アメリカのジャーナリストである、トーマス・フリードマンは著書『フラット化する世界』を発表しました。そこで述べられているのは、グローバル化が進むと、世界の経済は「フラット」な状態となり、その競争が世界規模に拡大していくという内容。例えば、アメリカのコンタクトセンターをインドに設置する…というような例を聞いたことがある人は多いでしょう。このようなトレンドがすでに英語圏では現れ、進んでいるのです。

一方、日本では言語の壁があるため英語圏より遅れてはいるものの、年々、グローバル化は進んでいます。オフショア開発や広告運用をアジア圏で行うというのも、徐々に一般化しています。特にベンチャー企業では、海外やコストの安価な立地にコンタクトセンターや、広告制作チームを持つ…という例が増えています。このように、場所や空間という境界が低くなる…という意味でのフラット化は今後もますます進むことでしょう。これが、今後の新しい潮流の1つと考えられます。昨今、ワークスタイル改革が盛んに指摘されていますが、これも場所や時間という“垣根”を取り払うという意味で、フラット化の1つと言えるかもしれません。

なお、2010年以降の主な動きを年表にまとめました。

2010年
・iPad登場2011年
・インターネット利用者数9610万人
・LINE登場

2012年
・Facebookユーザー10億人突破と報じられる

2013年
・LINEユーザー2億人突破

2014年
・Apple、新OSとiBeaconの連携強化
・日本でマーケティングオートメーション(MA)普及が進む

2015年
・インターネット広告が初の1兆円超え(電通発表)
・iBeacon普及が期待される

※ 総務省による推計

 

 

今後のデジタルマーケティング~まとめにかえて~

 

ここ15年ほどのデジタルマーケティングの歴史を振り返ると、ITの進化がいかに社会を変えてきたのか、つぶさに見てとることができます。しかし、その中心にいる購買行動をしている「人」はそう大きく変わるわけではありません。

消費者の視点に立ち、最適なタイミングで、最適なチャネル、そして最適な情報を提供することは、いつの時代も変わりません。

デジタルマーケティングは、そのために「データ」が必要不可欠という視点で進化してきました。これからも、忘れてはならない視点といえるでしょう。

 

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